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各党の主張に見る原発問題の難しさ

 本日の読売新聞に参院選にむけて、各党の主張が並べられた記事が載った。その中で注目したのが「原発に関する主張」という欄だ。以下引用

自民・・・エネルギー安全保障上、資源・エネルギーの多様で多角的な

     供給構造の確立 

公明・・・可能な限り速やかに原発ゼロをめざす

民主・・・2030年代に原発可動ゼロ

維新・・・既設の原発は2030年代までにフェードアウト

みんな・・2020年代の原発ゼロを実現

共産・・・原発の即時ゼロを決断

生活・・・2022年までに最終的な廃止を確定

社民・・・リスクの高い原子炉から順次計画的に廃止

みどり・・2023年までに全原発の完全廃炉に着手

                              (2013.7.20 読売新聞 総合 P.3)

 

 一見すると、自民党は原発推進。一方で、その他全ての党は原発反対にみえる。しかし本当にそうだろうか。2011年の大震災、そしてそれ以降の反原発運動と国全体が一番  ”原発問題”  に関心を寄せていたのは2011年そして2012年の2年間であろう。この間、緊急点検で日本の全ての原発が運転を停止したが、だんだんと再稼働の流れが生まれてきた。現在は5原発10基が再稼働申請中である。いずれこれらの原発は動き始める。

 

 本当に全原発の廃炉を考えるならば、この2年間が最も適した時期だった。 世論は原発反対に大きく傾いていたし、実際に全原発が停止していたからだ。しかし、実際にはそうはならなかった。多くの国民が反原発を掲げ、国でも多く議論されていたのにも関わらずである。それは原発がビッグビジネスであり、多くの人間の利害に関わっているからだ。そしてこれからも全原発の廃炉を実行するのは容易なことではないだろう。2030年代も2040年代も、新たなエネルギー革新、原子力を超える効率的で高エネルギーを取り出す方法がない限り、原発は稼働し続けると考えられる。

 

 ここまで考えると、上の引用は違うように見えてくる。自民は原発廃炉を含めてエネルギー問題についてそのプロセスを考えているように見えるが、他党は結果しか書いていない。どうやって実現するのかは闇の中なのだ。2030年に全原発を稼働ゼロと掲げても、この2年間に成し得なかったことがそれほど簡単だとは思えない、現実的でない。ではなぜこのような主張を掲げているのか。それは彼らにとって原発問題が現実身のある話ではないからだ。そもそも自分の政党が主権を握れるなどとは努々思っていないのである。原発ゼロは国民に対するキャッチコピーに過ぎないのだ。しかしこれだけの党が同じコピーを並べて意味を持てるのかは疑問だ。

 

最後に

 原発問題は非常にセンシティブな問題だ。重要なのは、エネルギー問題全体を考えつつ、原発の立ち位置を決めてゆくことだ。全原発廃炉を目指すなら、その実現のためにどのような方法が考えられるのか、その陰で起こりうる問題の対処はどうするのか、その代替エネルギーはどうするのか、という議論が必要になるだろう。その点、自民の主張は幾分、現実的なものに映る。そしてさらに、我々国民は多方向から情報を仕入れて、政治に対して、投票という形で声をあげなければならない。

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